この命のすべてで、君を想いたい

そして、私の体はとっくに限界を迎えていた。

ふと、視界が揺れた。

頭の奥で何かがずきんっずきんっと跳ね、そのまま世界がぐらつく。



一歩、足がもつれて、膝から崩れた。
海の音が遠ざかる。

最後に見たのは、空の薄い色だった。






気づいたとき、天井の白が広がっていた。
消毒液の匂い。



点滴のライン。
看護師の呼ぶ声。



「倒れて運ばれたんですよ。覚えてますか?」


雫はゆっくり瞬きをしただけで、何も言わなかった。



医師が病室に来ると、椅子に座り説明を続ける。


危険な状態だったこと、治療の選択肢、今後の方針。



だが雫には上の空だった。
どれも、自分と関係のない話のように聞こえる。


治療を勧められても、首は動かない。
「やります」とも「やりません」とも言えない。
ただ、意思のない静けさで拒んでいた。


食事が運ばれてきても、箸は一度も持ち上がらない。


味を感じたいと思う気持ちすら湧かなかった。

生きるための行為が、全部、遠い場所のものみたいで。