『その人とは、祖父の介護で知り合ったの。……辛さとか、全部、わかり合える人なの』
聞いた瞬間、心の奥が痛んだ。
そんな余裕が今の雫にあるわけがない。
そんな人が現れるような隙間は、
雫の毎日にない。
「だからって……そんな急に……」
声が震えるのを止められなかった。
「雫、俺……本当に意味がわかんねぇよ」
雫は俺の心を突き刺すように言った。
『空は何してくれた?』
二人で過ごした毎日が頭の中を駆け巡る。
思い出が山ほどある。
雫がくれた時間が、全部宝物なのに。
でも彼女は続ける。
『空のことなんて、もう好きじゃないの』
その瞬間、息ができなくなった。
拳を握りしめないと倒れそうだった。
それでも――責める言葉は出なかった。
雫が選んでいる言葉の全部がただまっすぐに届いてくる。
「……っ」
声がうまく出ない。
でも、絞り出した。
「俺は、まだ大好きだよ、別れたくないよ」
出てくる言葉は、何も雫に届かない。
雫の目が一瞬揺れた。
その揺れは、痛いほど優しい色をしていた。
でも雫は――俺の心を引き裂くように言う。
『でも、私は好きじゃない。今までありがとう』
そして、俺から離れていった。
