この命のすべてで、君を想いたい

『……好きじゃなくなっちゃった』

胸が殴られたみたいに痛んだ。

そんなはず、ない。

昨日笑ってたのは、あれも全部……?

「そんなわけないだろ……昨日も普通に笑ってただろ」


俺は雫に嘘をつかれたとは思えなかった。
雫はそんな子じゃない。

『演技だよ』


その言葉が、やけに苦しげに聞こえた。

雫は続けた。



『私、他に好きな人ができたの』

脳が追いつくより先に心が拒否した。



「嘘だろ」

声が震えていた。

沙月が慌てて言う。


「雫、何言って……そんなの、絶対――」

『黙って』

雫のその言葉は、明らかに雫らしくなかった。

沙月の目が大きく揺れて、
俺は胸が痛くなった。

『これは私と空の問題なの。関わらないで。……正直、ウザいよ』


沙月の目に涙が浮かぶ。


それを見て、雫の指先が一瞬震えたのを俺は見逃さなかった。



あの震えは――

でも、それよりも大きな衝撃が、直接脳を殴られたような衝撃で、何も考えられない。


蓮太郎が沙月の手を握り、肩を抱く。
裕大は悔しさと怒りを混ぜた顔。

そして雫は、さらに続ける。