雫は震える指をぎゅっと握りしめ、立ち上がった。



『ねぇ……みんなに話したいこと、あるんだ。』


 
四人の視線が一斉に向く。
 
風の音が止まったように感じた。

心臓の音が響き渡る。心が痛い。



『私……空と、別れようと思う。』


「なに?どうしたの?」


沙月の顔から一瞬で表情が消えた。
 

蓮太郎は「え……?」と言葉を失い、
裕大は箸を置いた。




そして一番驚いていたのは、空だった。
 
空の手がわずかに震える。



空だけは、声を絞り出すようにして聞いた。

「雫……俺、何かした?」

 
違う。
 

本当に誰も悪くない。

 
悪いのは、私がもうこの先にいられないという現実だけ。




でも、それを言うわけにはいかない。



『……好きじゃなくなっちゃった』

 
言った瞬間、心臓が潰れるように痛んだ。
 

そんなわけない、空のこと大好きだよ。
これからもずっと...



空は呼吸を忘れたように固まる。



「そんなわけないだろ……昨日も一緒に帰ったじゃん。普通に笑ってたじゃん」



『演技だよ』

 

また嘘を重ねる。




『私、他に好きな人ができたの』



「嘘だろ」



空の声が震えていた。