この命のすべてで、君を想いたい

ある日の帰り道。


夕焼けの光が校舎を朱色に染める頃、二人だけが廊下に残っていた。


「なんか今日元気なかったね」
と空が聞く。


空はなんでも分かっちゃうな。


「うん、ちょっと疲れちゃって」

そう答えて微笑む。


最近は疲れたとばかり口にしている。

その答えを聞いた瞬間、空は足を止めた。




「……最近、無理してない?」

雫は驚いて顔を上げた。空は窓からの光を受けて、少しだけ悲しそうに笑っていた。



「雫ってさ、隠すとき、右手の指いじるでしょ」


雫は反射的に右手を握りしめてしまう。


―そんなところまで見てるの?

胸が熱くなった。



『ほんとに大丈夫だから』

「そっか」


空はそれ以上追及しなかった。けれどその代わりに、そっと雫の頭を撫でた。


「無理しないで言うんだよ。俺、いつでも聞くから」


たったそれだけの言葉が凶器のように胸に刺さる。


そんな優しさ、今の私には耐えられないよ。