「おー、沙月たちだ。」

後ろから声がして振り向くと、空と裕大、そして蓮太郎の三人が立っていた。
沙月がすぐに笑顔を向け、手を振る。

「きゃー、ほんとに来た!ねぇ蓮太郎くん、ここ座って!?」


そういえば今日は、蓮太郎たちがいつも食堂で昼食をとると聞いて、沙月と一緒に来ていたのだった。



「ここ座っていい?」

空は軽く笑って私にそう聞いてくる。


『うん、いいよ。』

私は小さな返事をすると、空はすぐに私の横に腰を下ろす。



近くで見てみると、本当に整った顔立ち。
これは心底モテそう。









「傘気に入ってたでしょ?似合ってたからもらってくれてよかったよ。」


『そんなことないよ。』
私はこんな事しか言えなくなる。



「いや、ほんとに。あの傘があんなに似合う人、初めて見た。」

さらっとした声に、周りのざわめきが少し遠のいた気がした。


沙月が「キャー!イケメン発言〜!」と茶化すのを聞きながら、雫は視線を落とした。

どうしてだろう。
男の人と話すのは苦手じゃないけど、
なぜか上手く返せない。


この人の言葉は、からかってるようで、ちゃんと心に届いてくる。



『……ありがとう』



小さく返すと、空は嬉しそうに笑った。
その笑顔は、昨日よりも近く感じる。



昨日から胸を覆っていた曇りが、ほんの少し晴れたようだった。