この命のすべてで、君を想いたい


春のクラス替えで、雫と沙月はまた同じクラスになっていた。


空・蓮太郎・裕大は理系クラスで3人まとまっていて、移動教室でもなければほとんど会えない毎日だった。


「やっぱり修学旅行全員一緒って無理なんやな〜」
沙月がしおりをぱらぱらめくりながら言ったとき、


「あ、でもさ」
沙月が急に声を上げる。


「ここ!自由時間ある!これ合流したら5人で回れるんじゃない?」


放課後になって、沙月が男子3人を廊下でつかまえた。


気づけば5人がひとつの机を囲んで、しおりを広げていた。


「ここさ、景色よさそうじゃない?」

「いやいや、飯優先やろ」

「でもスイーツも捨てがたくね?」

「お前ら自由行動で迷子になるのだけはやめろよ」
蓮太郎が淡々と言う。


「俺迷子にならんわ!」

と言いながら裕大は地図を逆に持っている。


空は周りの話を聞きながら、ふと雫を見た。


「雫、行きたいとこある?」

『ううん。みんなで回れたら楽しいと思うし、それでいいよ』


空は少し笑って、
「じゃあ全部行く方向で組むか」と返す。

「全部!? 無理やって!」

「時間足りないよ!」

「俺ら歩き回るだけで終わるって」

そんなやりとりが教室に響いて、
夕方の光の中で5人の笑い声が混ざる。


自然で、いつものままの5人。


そして、そこにちょっとだけ特別な空気をまとった空と雫。



修学旅行が、静かに楽しみになっていく。