「ねえ雫、見て見て！蓮太郎くんがさ…」
教室の隅で、沙月は今日も天真爛漫に喋り続ける。


こんな可愛い子が私の友達なんて、今も信じられない
可愛い笑顔につい少し見とれそうになる。


けど私は心ここにあらず。


『うん、そう…』
適当に相槌を打ちながら、窓の外の灰色の空を見上げる。


登校中に壊れたお気に入りの花柄の傘を思い出して、
胸の奥がもやもやと痛む。


雨は本当に嫌いだ。
ジメジメしてるし、頭も痛くなる。
そういえば、この町に来たのもこんな雨の日だった。



沙月は、そんな私なんてお構い無しに、笑いながら話を続ける。
私はただ、灰色の空に溶けていく自分を感じていた。