「ひー、さむいさむい」
スタバから出るや否や、風花が白いコートのポケットから使い捨てカイロを取り出して手を温め始める。
「てか、雪月はいつもアイス飲んでるけど寒くないの?」
風花がこちらに向いて喋ると、そのリズムに合わせて白い息が吐き出される。
私は空に吸われていくように消えていく彼女の白い息を見つめながら、「私猫舌やし熱いのは無理」とさらっと答える。
「そっか。」
ポケットに入れていたスマホがぶるっと震えた。スマホも寒いのかと思ってポケットからスマホを取り出すと、母からの連絡が1件。
【お母さん 牛乳買ってきて】
「ねえゆーづき。コンビニ寄る?」
風花の声で我に返って、スマホから目を離すと彼女がいたずらを仕掛ける子供のような表情を浮かべていた。
「オッケー。ちょうどコンビニ寄る用事が出来たからちょうどいいわ」
「行こ!」
イルミネーションに彩られた夜空を背負った風花が私の左手を取って、走り出した。
「うん!」
白い息が細くたなびく。11月も下旬に差し掛かると、凍てつくほど寒いけど、風花に握られた左手はぽかぽかと温かかった。



