お嬢様は溺愛に溺れている

そんなこんなで意味不明に流れていった入学式から早くも一か月。


この、彼氏役の蓮樹先輩が私はきらいです…!王子様みたいな人がいいのに……!


「心ちゃ~ん?」


悪魔の声が聞こえてはっと我に返る。


「なんですかっもう……!」


「王子様になってほしい?」


王子様……?うん!それはなってほしい……!だってあこがれだもん……!


きらきらと蓮樹先輩を見つめた。


「ふっ、可愛い……」


っ……――。全然王子様なんかじゃないもんね…!


「いいよ、なってあげる。心だけの王子様に」


ふんっ、騙されないもん!


「その代わり、心のファーストキス、俺にちょうだい?」


っ……!何言ってるのこの人は……!少しでも期待した私がバカだった……!


なんで、ファーストキスって……もしかしたらもう終わってるかもしれないのに……馬鹿にしてる!


あ!いいこと思いついた……!


「もう終わってるもん……ファーストキスなんて……」


ほんとはしたことないけど……。


そう、これが始まりだった。


狼くんが狂暴化する始まり――。