お嬢様は溺愛に溺れている

「いやだ!もっと王子様みたいな人がいいもんねーだ!」


何かをこらえるように見つめた後、一瞬何が起こったのかわからなかった。


覆いかぶさるようにして私を押し倒してきた。


ちょっとまって!私殺される…?やだやだやだ!生きたい!もっと生きたい!


「お嬢様はこんなのが王子様だったとしても、そいつがいいですか?」


ん?何言ってるのかさっぱりわからない。


「王子様はそんなことしないもん!優しくて、スマートで、かっこいいの!」


真上にある蓮樹先輩の顔が苦しそうに歪んだ。


「男はみんなこんなもんです。優しい男なんていません」


ガーン。確かにさ、簡単に見つかるとは思ってないよ?でも、ほかの男の子はこんなに悪魔先輩じゃないもーん。


「王子様は悪魔先輩とは違いますから!」


そういうと何やら軽く息を吐いた。


「お嬢様、男はみんな危険なんです。優しそうに見えても頭の中なんてお嬢様が想像する何倍も危険なことしか考えていないんですから……」

……・、・、・、???


「わかってないようですね?では教えてあげましょうか?」


そういった連樹先輩の目が怪しくギラリと光った…?


うん……?なんか怖そうだから知りたくないよ……。


「それに蓮樹先輩はただのサポーターさんなので……」


「へぇ?いつそれが変わるかな」


そう言ってニヤニヤ笑う先輩。やっぱ悪魔!意地悪!最低!


「二人とも、そういうのはおやめください」


私の生活の監視役さんが真顔でミラー越しに目が合う。


「すみません」


ヘラっと笑う先輩……。ってなんか、先輩って呼ぶのもバカバカしくなってきた!


「蓮樹!」


勢いでそう言ってみると煽るかのように笑った悪魔さん。


「うれしいよ、心」


そう言って耳元で囁いてきた蓮樹だけど……なんか怒ってる私。


そうこれは意地悪(仮)彼氏の始まりに過ぎない――。