Existence *

暫く歩いて広い広い駐車場までたどり着く。


「あれ?車かえたの?」


車の前まで来ると美咲は見渡す様に車を覗き込んでいた。

丁度、買い替えたのは1年前。


「そうそうかえた」

「相変わらず高そうだねぇ…」

「そんな事ねぇけど。うわっ、すんげぇ暑い」


助手席のドアを開けた瞬間に広がってくる熱気。

そして照りつけてくる日差しに思わず顔を顰めた。

座ってエンジンを掛け、窓を全開する。


「うん、暑いね…」


助手席に座った美咲は小さく呟き、冷風で揺れて乱れる髪を整え、耳にかけた。


「向こうってさ、冬だろ?真逆だから身体に堪えるんじゃねぇの?」

「んー…どうだろ。冬って言う割には気温20とかだし」

「あー…そんなもんだっけ?」

「うん。でもこんな30度以上あったらキツイけどね」

「だろ?」

「って言うか翔さ、身体大丈夫なの?」


聞かれると思ってた。

美咲の事だから絶対にそのことに触れて来るだろうと思ってた。

不安そうな表情で問いかけてくる美咲に「あー…」って濁す様に呟いて。


「うん、大丈夫」


そう言葉を繋ぎとめた。

入院してた事は言えなかった。

いや、むしろ言うつもりもない。


「薬飲んでるの?」

「夜の仕事辞めてから飲む回数は減ったけど」

「…そっか」


夜の仕事を辞めてから本当にお酒の量が減った。

多少並みには飲むものの、浴びる様に飲むことは全くなくなった。

5年前からずっと気にされていた事。

それを5年経った今でも美咲は気にしてくれていた。


「それよかどうだった?あっちの生活は」


この話から避けようと、俺は違う話題を振る。

ちらっと美咲に視線を移すと美咲は頬を緩ませた。