Existence *

――

5月下旬。


「翔くんっ、みぃちゃんっ、」


空港で香恋と萌が叫んだ。

振り返る先には涙を流した香恋と萌が一緒に手を繋いでいて、その後ろで葵ちゃんと桃華さんが寂しそうに俺たちを見つめていた。


「来てくれて、ありがとう」


美咲が頬を緩めて言葉を放つと、香恋がワンワン泣き始めた。


「また、帰ってきたら会おうな」


近づいてしゃがみ込んだ俺は2人の頭をそっと撫でる。

ここ数日、子供達に行く事を伝え、離れる事を納得してもらうのに相当な時間がかかってしまった。


「ほんとに行っちゃうの?」


悲しそうな顔で萌が涙を流した。


「うん。また帰ってきたら遊ぼうな」

「香恋も行く」

「萌も行きたい」

「香恋と萌はパパとママが寂しがるから、こっちに居なくちゃ」

「なんで?なんで、みぃちゃんは連れて行くの?」


頬に伝う涙を拭いながら萌が鼻を啜る。


「みぃちゃんは俺の大切な人だから」

「萌達は大切じゃないの?」

「香恋も行く」

「萌と香恋も大切だよ。そんな大切な2人を連れて行っちゃうとパパとママが寂しくなる。パパとママを大切にしてあげて」


困った顔をして涙を流す2人の前に美咲がしゃがみ込み、そっと2人を抱きしめる。


「萌ちゃん、香恋ちゃん。帰ってきたら沢山遊ぼうね。約束」


2人の身体を離し、両手の小指を2人に差し出す。

その美咲の指に2人の小さな指が絡まった。


「翔くん、美咲ちゃん、ごめんね」

「いえ、」


桃華さんが困ったように顔を顰める。