Existence *

「おぉ、翔おかえり」

「遠足楽しかったか?」

「よく躾がいきとどいたガキ達ばかりで楽しかったっすわー」


苦笑いしながらポケットから取り出したタバコに火を点け、背を後ろに付ける。


「大物両親に育てられてっからなー、アイツらは」

「そうっすよねぇ。すげぇ口がうっさいっすわ」

「それ褒めてんのか貶してるんどっちや」

「どっちもっす」

「まぁ、翔もちょっとだけ飲めや。あと半月で旅立つんやろ」
 
「そーっすね」


グラスにビールを注がれ、それを口に含み、タバコを咥えた。


「それにしても、えらい別嬪な女やん。一回見たことあったけど遠くからやったからなぁー…」

「……」

「お前には勿体ないやろ。ちょっとここへ呼んで来て」


恭介さんが言った言葉に、皆んなが笑いながら乗り出す。


「おぉ、それええな。おい、翔呼んで来て」

「いやいや、ダメっしょ。そんな接待やってねぇから」

「挨拶や」

「しなくていいっす」


空いたグラスに哲也さんがビールを注ぎ込み、そのグラスを俺は手にした。


「ちょっともぉ、あんまり翔くんにお酒継がないでよ」


不意に聞こえた沙世さんの声。

顔を顰めながらテーブルに水が入ったピッチを置いた。


「まぁ、姐さんも座りぃや」

「ほんまや、座って飲みましょーや」

「ごめんなさいね。私は若者だからあっちに座るわ」


指さす方向は美咲が居る席で、楽しそうな笑い声がいっぱい飛び交っている。

その横はアキとタケルたちが居る席で、楽しそうにはしゃいでいた。


「おぉ。俺も若者やから俺もあっち行ってくるわ」


そう言ってルキアさんが立ち上がる。


「いやいやいや、」


その進んで行く足に向かって俺は手を伸ばし、ルキアさんを止める。


「なんや?」

「いかなくていいっす。沙世さんも」

「えー、なんでよぉ…」

「ほんまや。なんでアカンねん」

「余計な事喋るから行かなくていいっすよ」

「何も話さないわよ。美咲ちゃんに挨拶するだけよ」

「俺もや」

「それが余計」


顔を顰めてタバコを咥えた俺に周りからクスクス笑い声が聞こえ、そんな俺の言葉を無視するかのように沙世さんとルキアさんは美咲の居る所へ向かった。