Existence *

立ったまま目を瞑っている香恋を抱きかかえると、香恋は眠そうに俺の首に両腕を回してきた。


「香恋、歩く?」

「ううん。翔くんがいい」


その言葉で思わず苦笑いが漏れ、隣の美咲も困った様に笑う。

他の子供たちはそれぞれ手を繋いで、楽しそうにお喋りしながら歩いてた。


「翔くん、みぃちゃん、楽しかったね」


萌が杏と手を繋いで楽しそうに振り返る。


「うん。楽しかったねぇー…みんなパパとママにお話ししてあげてね」

「うんっ!!」


美咲の言葉で子供たち全員がそれぞれ返事をする。

そんな会話に俺は頬を緩ませた。


駅から沙世さんの店まで5分。

店に着くと、なんの集まり?ってぐらい人が居る。


店の客ではなく、全員俺が知ってる顔ぶれ。


「おかえりーっ、」

「おかえり」


あちらこちらから飛び掛かって来る声。


「美咲ちゃん、ごめん」


いち早く美咲に駆け寄った蓮斗が愛優を抱っこし、その後に諒也が来る。


「翔さん、ごめん」

「相当疲れてるから、もう寝かせた方がいい」

「どうぞー、2階にお風呂も寝る所もいっぱいあるから適当に使っちゃってねー」


奥の方から沙世さんの声が飛んでくる。

蓮斗と諒也が2階に上げると、それぞれの子供たちの声が響き渡った。


「すげぇー、楽しかった!!」

「ペンギンもキリンもイルカも見た―」

「俺、ライオン見た。カッコよかった!」

「コアラ可愛かったよ」


まだまだ元気いっぱいの子供達から視線を外し、椅子に座ろうと、美咲の背中に触れた時、


「美咲ちゃん、初めましてぇー、桃華です。会いたかったよぉー」


そう言って、桃華さんが美咲に抱き着いた。


「あ、初めまして。美咲です」

「今日はありがとう。大変だったでしょ?」


桃華さんが美咲から離れると、美咲は頬を緩めて首を振った。


「いえ。私も楽しかったし、みんなお利口さんでした」

「えー、ほんとにぃ?」

「お利口なわけねぇだろ。お前も困ってただろうが」


つい、口を挟んでしまった。

その俺の言葉で、美咲が困った様苦笑いをし、桃華さんも戸惑った様に笑みを漏らした。