Existence *

「なに?」

「美咲のお母さんから言われてた事があって、」

「ママから?…なんて?」

「家の事。私が亡くなったら売却してほしいって言われてた。美咲もそう思ってる?」


そう問いかける俺に美咲は困った様に首を傾げ、視線を落とす。


「正直わかんない。でもここのマンションに居るのならそうした方がいいのかなって、思う」

「俺もずっと考えてたんだけど、やっぱしあの土地を売るのは勿体ないから」

「でも住んでないのに払うって…、それも納得いかなくて。ママが残してくれているお金で払ってはいるけど…」

「残りあと一千万って言ってた?」

「…と、少しかな」

「それ、俺が全部払うから」

「え、どういうこと?」


ビックリした美咲の顔があがる。

目を見開く美咲は俺をジッと見つめた。


「俺が払うから美咲はお金の事は心配しなくていい」

「心配しなくていいって言われても、金額が…」

「大丈夫。ここのマンション引き払おうと思って」

「…え?なんで?」

「んー…必要ないから、かな」

「必要…ない?あっちの家で住むって事?」

「それでもいいかなって思ってる」

「えっ、でもっ、」

「俺さ、来月から2年間アメリカへ行く」

「…え?…え、ちょっと待って、アメリカってどういう事?」


戸惑った美咲は瞳を大きく揺らし、困惑する。

ま、それはそうだろう。


「仕事で行く。だからここのマンションも引き払う」

「え、待ってよ!話がついていけないんだけど…」

「……」

「ら、来月って、なんでそんな急なの?」

「急じゃない。去年からずっと決めてた」

「え…」

「美咲?」


戸惑う美咲の頬に触れる。

俯いている美咲は俺が触れた事で視線を上げる。

そして、その頬に添えている手を滑らせ、美咲の手を握った。