Existence *

…――――


ぼんやりした視界の中、俺は目を覚ます。

心地いい風か頬を掠め、俺はそっちに視線を向ける。


窓を開けて、その前で立っている美咲に、俺は視線を移し、身体を少しだけ起こした。


「…美咲?」


俺の声でゆっくりと美咲が振り向く。

長い髪が風で顔を覆い、美咲はその靡いた髪を耳に掛けた。


「うん?」

「どした?」

「全然変わんないなーって思って。…あの頃とね」

「あー…」

「ねぇ、欲しいもの決まった?まだ、聞いてないから」

「あー…」


思い出すかのようにそう呟き、俺はシーツをはぎ取って腕を伸ばす。

そこにあった婚姻届の用紙。

俺の横には美咲の名前が埋まっているそれを手に取って、ヒラヒラとさせた。


「美咲が書いたこれ」

「それ?」

「そう。これが欲しかったから、もう何もいらねぇよ」


そう言った俺に美咲は頬を緩ませる。


「その前に――…」


言いかけた時、朝焼けが眩しくて、お互いの視線がそっちに向かう。

心地いい風が美咲の髪を揺らし、微笑んで美咲は俺を見た。


「その前に、なに?」

「その前に絶対しないといけない事」

「絶対にしないといけない事?」

「報告。誰よりも先に、お袋たちに」

「うん。そうだね」

「おいで、美咲…」


腕を伸ばす俺に近づいて来る美咲の腕を掴む。

その腕を引き寄せると美咲の身体がベッドに倒れ込む。


ギュッと抱きしめ、必然的に重なり合う唇。

何度か重ね合した唇が自然に離れると、美咲ほ頬を緩ませた。