Existence *

「…綺麗」

「それなら仕事で使えるかなって」

「いいの?」

「あぁ」

「でも高そう…」

「またそれかよ」

「だって…ありがとう。大事にする」

「あぁ」


ニッコリとほほ笑んだ美咲に俺も頬を緩める。

時計に視線を移してる美咲に俺はもう一つ持ってきた物。


「あと、これな」


スッと美咲の前に封筒を差し出す。

美咲が何て言うのかは分からない。

でも、俺は美咲しか居ない。


その答えはずっと決まってた。


「何これ」

「見れば分かる」


受け取った封筒の中から美咲は紙を取り出し、それをゆっくりと開ける。


「これ…」


小さく呟く美咲の声。

美咲と同じ様にその用紙に視線を送ると、俺が書いた婚姻届けの用紙。

その用紙から俺は視線を外し、目の前の海を眺めた。


心地いいくらいに聞こえる波音。

その音に交じる俺の吐いた息がスッと消えた。


「美咲がもう一度旅立つって言った時、そのある物で決めていいからって言ったのはその事」

「……」

「美咲、言ったよな?俺がお前のものだって言う何かが欲しいって」

「うん」

「結婚しよ。ずっと一緒に居る自信あるよ、俺は」


美咲を見て微笑むと、美咲の瞳が揺れる。

その揺れた目が俺から用紙へと移る。


「…私、いい女じゃないよ」

「俺もそう。出逢った時から気持ちは変わらないから」


全く変わらなかった。

他の女が寄りついてきてても、俺は美咲から気持ちが変わることがなかった。

ただ一緒に居たい。

ずっとそう思ってた。


腕を伸ばし、美咲を抱きしめる。


「ありがと。嬉しい」


涙声でそう言った美咲の身体をギュッと抱きしめ、俺は頬を緩めた。