Existence *

離れたくないと思っているのは、きっと美咲よりも俺の方だった。

5年前、夢を追っかけて行った美咲は、きっと俺より強かっただろう。


あの時、何度会いたいと思い続けただろうか。

美咲が俺に会いたい想いと、俺が美咲に会いたい想いはきっと違う。


俺のその想いの方が強かったと今でも思う。

そして今も、そう思う分。

一度手離してしまった美咲の手を、この先も離したくないと思うほど、美咲の存在が大きかった。


「ねぇ、ここからだと掴めそうじゃない?」


不意に聞こえた声。

夜空に向かって両手を伸ばしている美咲はそう言って俺に視線を向けて来る。


「なにが?」

「星だよ、星」


咥えていたタバコを口から離し、俺は空を見上げた。

ずっと先にある真っ暗な暗闇に、数知れずの星が散らばって輝いている。


つか、掴めそうって、なに?


「…いや、それはねぇな」


思わずフッと鼻で笑いタバコを咥えて美咲に視線を送った。


「だーから、そんな感じだよねって話しだよ」

「あー…そうなのかな」


俺にはよくわからない事で、素っ気なく返すと美咲は顔を顰める。


「なんか、どうでもよさそうだね」

「って言うか、たまにそう言うロマンチックっぽくなる美咲に驚く」

「どう言う意味よ、それ!」

「そう言う事」


少し怒ってる美咲に俺はクスクス笑う。

案の条、美咲は眉を寄せて頬を膨らませた。


「私も一応女だからね」

「そうですね。つか、置いてくぞ」


頬を緩め、俺は車まで足を進め乗り込んだ。