Existence *

「別れ話って、…まさか。つか、俺は美咲に優しくされると怖いから」

「なにそれ」

「そのまんま」


もぉ。と顔を顰める美咲にフッと笑い、店の中へと足を進めていく。

美咲が言う通り、あの頃と全く変わらず、むしろあの頃を思い出すような感覚だった。


ここから見える夜景が物凄く綺麗で、窓際から見える輝きを美咲はずっと見てた。


「好きなの頼めよ」

「うん」


注文をした後、美咲は嬉しそうに鞄の中からスマホを取り出し窓に向ける。


「もしかして撮る気?」

「うん。記念に」

「つか撮れねぇだろ」


こんな窓際から撮れるわけねぇだろ。

なんて思いながら美咲を見て笑う。


「うん。撮れないね」

「んじゃあ今度、昼間にしような。だったら景色撮れんじゃん」

「え?ここ昼もやってんの?」

「やってる。だって飲食だろ」

「そうだけど夜だけかと思ったから」

「まぁ、夜の方が綺麗だけどな」

「でしょ?」

「あぁ」


頼んだ料理が運ばれ、美咲は美味しそうに頬張っていく。

くだらない話はもちろん、他愛ない会話をし、食べ終わる美咲に視線を送る。


「なぁ、美咲?」

「うん?」

「仕事探しどーなってんの?」

「うーん…まだ決めてない」

「そか」

「なんで?」

「うーん…ただ気になっただけ」

「最近やけに気にしてない?」

「そうか?」

「そうだよ。あ、でも候補は何個かあるよ」

「へぇー…英語に関する職って事?」

「うん。だって、私それしか執り得ないもん」

「んー…じゃあ俺の通訳でもしといて」


そう言った俺に美咲はキョトンとし首を傾げる。


「え?日本語の?」

「なんでだよ、違うだろ」

「え、なに?意味分かんない。どういう事?」

「なんでもない。決めるのは急がなくてもいいって事」

「うん。でもねぇー…」


濁す様に呟く美咲にフッと笑みを漏らす。

食べ終わった後、外に出た俺は取り出したタバコを咥えて火を点けた。