Existence *

「しょーくんがいい」

「え、俺?」

「うん!」


諒也でも葵ちゃんでもなく、俺。

苦笑いが漏れながら、香恋の頭をそっと撫ぜた。


「えー…ママかパパだよ?」

「翔くん、好き」

「そんな好きなんだ」

「んじゃあ、俺とゆーくんっつー奴どっちがいい?」


俺の質問に香恋が首を捻った。

暫く考えている香恋を見て、美咲は困った様に苦笑いをしている。


「つか、そんなに迷うのか?」


どうやら俺は迷う質問をしたらしい。


「どっちも好き」


暫くして香恋が言った言葉に美咲はただ苦笑いだった。

暫くしてインターフォンが鳴る。


「パパだよ」


美咲の言葉で俺は香恋を抱きかかえる。

そして玄関に向かって歩いて、そのドアを開けた。


「パパっ、」

「諒ちゃん、ごめん」

「いや、こっちも香恋見てもらってるし」


美咲が差し出した香恋の鞄を諒也は受け取り、その手は香恋に向かう。


「香恋、帰るぞ」


だけど香恋はフイっと顔を背けて、俺に更に抱き着く。

こうなる予想はついていた。

そんな簡単に香恋が俺が離れてくれるとは思わなかった。


「諒ちゃん、なんかしたの?」

「何もしてねーよ」

「相当嫌がってんじゃん」


美咲の言葉で俺までも笑ってしまう。


「おい、香恋帰るぞ。ママ待ってる」


諒也がため息交じりで言葉を吐き出す。

でも香恋は聞く耳持たずで、俺の肩に顔を伏せていた。


まじで、まいったな、これ。

いつも思うが、香恋と別れるときは時間がかかる。


「おーい、香恋。今度、動物園行こうぜ」


別れる時に今度の約束をすると案外香恋は離れてくれる。

だから、もうそれを利用するしかなかった。

言ったからには実行しねぇといけないけど、この場をしのぐにはそうするしかなかった。