Existence *

「ハンバーグ」

「あ、そうそう。今日ハンバーグなの」


香恋の言葉で思い出したかのように美咲がキッチンへと足を進めていく。


「香恋食べたか?」

「うん!食べた。…しょーくん、しょーくん、しょーくんも食べる?」

「食べるよ。なぁ香恋、保育園楽しいか?」

「うん。お外で遊んだりお絵描きしてる」

「良かったなぁ」


香恋とソファーで俺のスマホでアニメを見ていると密かに聞こえて来る音に美咲がスマホを掴み、焦った表情をする。


「…はいっ、」


慌てて出る美咲に香恋も不思議そうに美咲を見てた。


「ご、ごめんっ!今、翔のうち」

「……」

「ごめん、言うの忘れてた。もしかして私んち?」

「……」

「ごめん、ホント」

「……」

「うん、ごめん」


何度も謝る美咲。

電話の相手はきっと諒也だろう。


「え?もしかして諒也に言ってなかったのかよ」


電話を切る美咲に俺は苦笑い気味に呟く。


「うん、すっかり忘れてた」

「今から来んだろ?」

「うん」


頷いた美咲はキッチンへと向かい、俺は香恋を見た。


「香恋、翔くんと寝る」


ニコニコする香恋を見て俺は苦笑いが漏れる。


「もうすぐパパ来るから今日は香恋と寝れないなぁー…」

「パパに帰ってもらう?」


普通に諒也が聞いたら怒んだろ。と言う言葉に俺は更に苦笑いが漏れる。


「いやいや、パパ可哀相だろ。ママだって心配するから」

「心配しないもん」


頬を膨らませた香恋を見た後、美咲に視線を送ると目が合った瞬間、どうしようもない苦笑いが込み上げて来る。


「じゃあ翔くんも帰る?」

「え、俺はもうここへ帰って来てるよ」

「香恋のおうちくる?」

「ううん、行かない」

「香恋も帰らない」

「いやいや香恋は帰らねぇとママ心配するから」

「しない」


困ったな、と思ってると美咲がテーブルに置く料理を見て香恋は嬉しそうに椅子に座り、隣の俺に寄り掛かった。


「いただきます」

「いただきまーちゅ」


手を合わせた俺と同じ様に合わせる香恋を見て、美咲は笑顔で見つめる。


「ねぇ、香恋ちゃん?…ママかパパどっちが好き?」


椅子に座りながら美咲が問いかける。

そんな質問に香恋は一瞬首を傾げたが、笑みを向けた。