Existence *

あの俺が曖昧に言った言葉も、美咲はそう深くは考えてはいなかった。

あれから更に一週間が経つ。

俺が旅立つ前にやる仕事がたくさん残ってて、美咲との時間があまりとれない日々。

これじゃあ昔とあんま変わんねぇなって思うけど、それに対して美咲は何一つ俺には言ってこなかった。


ま、美咲の性格上そんな事、言ってこねぇか。

それも昔から変わんねぇわ。


そしてまだ自分のマンションの事。

美咲の家。

美咲との事。


片づけることが溜まってんのに、それを解消していく時間もなかった。


「しょーくんっ、」


玄関を開けて廊下を歩くと、可愛い声と同時に駆け寄って来る小さな足音。

両手を広げて駆け寄って来る香恋を見て、俺はしゃがみ込んだ。

そのしゃがんだ俺に勢いよく香恋が抱き着いて来る。


「おー、ビックリしたぁ…」


香恋を抱きかかえて俺はリビングに顔を出す。

俺と目が合った美咲はクスリとほほ笑んだ。


「おかえり。早かったね」

「あぁ。つか、どした?何かあった?」


まず香恋のお迎えの時はここには居ない。

目の前の美咲は苦笑いしながら首を振った。


「ううん。香恋ちゃんが翔に会いたかったんだって」

「へーそうか。香恋、俺の事スキか?」

「うん!好きー」


嬉しそうにする香恋が俺の頬に自分の頬をくっつける。


「香恋。可愛いなー、お前。俺も香恋の事、好きだよ」

「あのね、みぃちゃんも翔くんの事いっぱい好きって言ってた」


嬉しそうに言う香恋から美咲に視線を向けると、何故か美咲は照れ臭そうに戸惑ってた。


「え、香恋ちゃん。それは言わなくていいよ」

「なんで?」

「なんでって…」


こんな3歳児に言われて恥ずかしくなってる美咲が面白くて、俺は思わず笑みを零す。