Existence *

「ゆっくりしろよ」

「ゆっくりって言われても散々したしな。それに時間の使い方が分かんない」


その言葉で目を瞑っていた俺はクスクス笑みを漏らし、瞼を開ける。


「やっぱ、美咲らしいな」


覗き込むように美咲の顔を見る。


「らしい…と言われてもね」


苦笑いになる美咲の頭を撫ぜ、俺は再び目を閉じる。


「金の事は心配いらねぇから。美咲の分もなんとかなる」

「でも、家のローン…」

「それも何とかなる。だから心配すんな。…あと一時間寝ようぜ」

「うん」


睡魔に勝てずこの1時間が1分のようだった。

耳元で鳴るアラームに意識が動く。

目を瞑ったままスマホに手を伸ばしアラームを切った。


隣で眠っている美咲を起さないようにと起き上がり、俺は洗面所に向かう。


…眠い。

言える事はただそれだけで、冷たい水で顔を洗い眠さを吹き飛ばすも、そんな事では眠さは残ったままだった。


暫くソファーで居るも時間が迫り、俺は仕方なくスーツに着替えタバコを咥えた。

スマホの画面に埋もれるニュースに視線を向けながら火を点ける。


その数分後、慌ててリビングに顔を出した美咲は乱れた髪を整え耳に掛ける。


「あれ?もう起きた?」


咥えていたタバコを離し、ゆっくりと煙を吐き出した。


「あ、ごめん…」

「うん?」

「なんか食べた?」

「なんも」

「じゃ――…」

「って言うか、何もねぇから。食材。…だから何もしなくていい」


こんな早くに起きてきて、また俺の心配とかほんと、そこも相変わらず。

苦笑いを漏らす俺に、「あぁ…」と戸惑った美咲の声が小さく零れた。