Existence *

「…間違ってたのかな」

「何が?」

「分かんないけど、自分の選択が。…なんかよく分かんないの、自分でも」

「……」


何に対しての選択の間違いなんだろうか。

俺に別れを告げて別れた事?

もう一度、行こうと決めていた日本語講師を辞めた事?

それか、今俺と一緒に居る事だろうか…


どれをとっても、その選択の意味が重なる。

でも、それは俺が決める事じゃない。


「だから…間違ってたのかな――…」


そう言いかけて、美咲はシーツをはぎ取って顔を出す。

そしてゆっくりと俺の方に身体を向けた。


ここに来て、やっとまともに美咲の顔を見た。

寂しそうに見つめるその美咲の瞳と重なり合う。


「それは美咲が決める事だろ」


その瞳に吸い込まれるように、俺は手を伸ばし美咲の頭に触れた。


「人間って、曖昧な生き物だからな」


続けてそう言って俺は美咲の頭を抱え込んで抱きしめた。

ほんとに曖昧な生き物しかも思えない。

自分勝手に歩んで、そして自分の都合で歩いていく。

周りに振り回されても、自分の正しい言葉も言えなくて、そんな自分に苦しむ。


でも後悔を経験してしまったら、案外眠っていた言葉がすんなりとでてくる。

…ほんと曖昧。


美咲を抱きしめるのがいつぶりだろう。

抱きしめるこの感覚が愛おしく思い、美咲を手放したくないと思った。


やっぱり好きで――…


「…美咲」


身体を離し美咲を見つめると美咲の視線と絡まり合う。

その瞳に吸い込まれるように頬に手を滑らせながら俺は身体を起し、美咲の顔に自分の顔を近づける。

その美咲の唇に重ね合せようとした時、


「私と翔の関係って、何?」


あと少しで触れ合うの距離が、俺が身を引いたことで距離が出来る。