Existence *

「…美咲、着いた」


肩に触れ、美咲の顔を覗き込む。

長い髪が顔を覆い、その髪を少しだけ指で払いのけて、美咲の肩を揺すった。


「美咲?着いた。…美咲、美咲」


少しだけ美咲の身体が動く。

それと同時にゆっくりと美咲の瞳が開いていく。


「…あっ、」


身体を整えて、小さく声を漏らす美咲は視線を目の前に向けた。


「どうしようか迷ったけど。…家が良かった?」

「あ、いや…」


ぎこちなく、そして曖昧に呟かれた小さな声。

戸惑ってる美咲の声にフッと息を吐き捨てた。


「…ま、とりあえず来いよ」


車を降りて助手席へと向かう。

ドアを開けて俯く美咲に視線を送る。


「美咲?」

「あぁ…うん」


曖昧に呟く美咲は車から降り、俺の後をゆっくりと着いて来る。

来たくなかった。と、でも思っているのだろうか。

強制的に連れて来た美咲は何を考えているのか分からないくらい口を開かない。


「風呂、入りたかったら入れよ」


リビングに入ってすぐに美咲に声を掛ける。

俺と一緒が気まずいとでも思える雰囲気に、俺はそう言うしかなかった。


頷く美咲はバッグから着替えを取り出し、そのまま何も言わずに風呂場に向かう。

その姿から視線を逸らした俺は冷蔵庫からビールを取り出し喉に流し込んだ。


深くため息を吐きながらタバコを咥える。

火を点けてすぐスマホを掴んだ。


すでに2時を回ろうとする時間。

暫く鳴らして途切れた着信音に一息つく。


「悪い、こんな時間に。葵ちゃん、もう寝てるよな?」

「1時まで起きてたけど今は寝てる。…美咲見つかった?」

「あぁ。連れて帰って来たから朝、葵ちゃん起きたらそう伝えて」

「うん」

「心配しないでって、言っといて」

「あぁ、わかった」


諒也と電話を切った後、タバコの煙を深く吐き出し、ビールを飲み干す。

まだ吸えるタバコを灰皿に押し潰し、俺はソファーに寝転んだ。


寝て視界を遮るように腕で遮断した。