Existence *

ちょっとは思ってた。

もしかしたらギリギリに来るんじゃないかって。

少しは期待していた。

でもその1%の期待が何もかも消えた。


美咲は一度もここへは来なかった。

渡した鍵さえも、ここには戻って来ず、ここすら立ち寄る事もなかった。


美咲の意思は相当に固かった。

もうきっと、ずっと前から俺の事を吹っ切っていたのだろう。


「…お前、今日誕生日やん」


休憩中、外のベンチに座ってタバコを吸っている俺の隣で恭介さんが腰を下ろした。


「そーっすね」

「なんやんねん、誕生日やのに暗いなぁ。祝ってくれる奴おらんくて寂しがってんのか?」

「はい?そんな寂しがるような年齢じゃねぇっす。それに朝から色んな奴からずっと、おめでとうLINE来てる」

「おぉ、さすが人気者やな。俺なんかそんなん入ってこーへんわ。じゃあ、ここらへんで30になった抱負は?」

「なんすか、それ」


クスクス笑いながら見て来る恭介さんにため息を吐き出した。


「抱負やん。どうなりたいねん」

「あー…強いて言えば、誰にも邪魔されない人生っすかねぇ…」

「なんやねん、それ。お前、今まで何があってんって回答やな。まだ30やろ?どんな人生送って来てんねん」

「まー…色々?と、」

「じゃあ、皆で飯でも食いに行こうや。祝ったるわ」

「いやー…もうヤローばっかで祝うとかいいっすわ」


タバコの煙を吐きながら苦笑いする俺に、恭介さんがハハッと笑った。