―――…

「…翔?ねぇ、翔起きて?」


遠くの意識から聞こえる声。

俺の身体が揺れ動く。


「…うん?」


意識が朦朧とする中、俺はゆっくり瞼を開けていく。


「アラーム鳴ってるよ?」


そう言われて近くでアラーム音が途切れる事なく奏でてる音。

焦った顔で見つめる美咲に俺の意識がハッとした。


「…え?今何時?」

「6時40分」

「…マジか、」


時間を聞いて焦った俺は慌てて身体を起し、そのままスマホのアラームを切る。

どれくらい寝たのかもわからなく、数時間も経たないうちにいつの間にか朝が来ていた。

そりゃそうだよな、と思った。

俺の感覚では2時間しか寝ていない。

だけどそれは美咲も同じで。


「どうしたの?」

「仕事。アラーム6時に掛けてたけど全然気づいてなかった」

「…ごめん、私も気づかなかった」

「いや、起こしてくれてありがと」


時間が押しているため、俺は急いでベッドから抜け出し洗面所へ向かう。

まだ全然、吹き飛んでいない睡魔を冷水で洗う。

久しぶりのこの感覚。

今日1日、この睡魔に勝てそうな気がしない。


「翔?…ご飯は?」

「うん?いらね」

「何で?ちゃんと食べなよ」


身体の次はご飯の心配かよ。

昔っから身体の心配はされてたけど、帰ってきたらご飯の心配まで追加されてるって事?


「つか、そう言う事、美咲には言われたくねぇわ。いつも食ってなかったくせに」


タオルで顔を拭きながら笑う俺に美咲の顰めた顔が鏡越しから見える。