Existence *

実香子が病室を出た後に、もう一度封筒を覗き込む。

そこから取り出した札束。

それを1枚1枚数えた。


50枚。

この50万はいったい何に対しての50万なのだろうか。


俺との事は何もかもなかったかのように水に流して、きっぱりと忘れていくと言う意味だろう。

美咲はそういう奴。

借りたお金はすべて返さないとって言う奴。


貸した覚えはないものの、美咲にとったら全て借りたお金なんだろう。

返すと言う事は、もう美咲の中には俺は居ないのだろう。


深くため息を吐き出し、その札束を封筒の中に入れる。

それを引き出しに閉まって、俺はぼんやりと天井を見上げた。


俺に気持ちがあっても、美咲に気持ちがないのであれば、このまま終わる方が楽に違いない。

むしろもう終わってる事を、ダラダラと想い続けても仕方がない。


そんな事を思いながら数日後、俺は美咲に電話を掛ける。

だけど、全くでなくて、何時間おきに掛けても繋がる事はなく、何度掛けた俺の電話に美咲は一切出る事はなかった。


「ほんっと、なんだよ、アイツ…」


ここまで避けられるなんて正直思わなかった。

ここまでしてでも俺と話したくねぇって事か。


まだある好きの気持ちとイラつく気持ちが混ざり合う。

こんな複雑な感情は当たり前に初めてで、むしろこんな感情すら味わうとは思わなかった。


こんなお金持ってきて、それを放置出来る俺ではない。

アイツが何を思って、何を考えてるのか知んねぇけど、俺にだって思う気持ちは沢山ある。


こんなもん持って来やがって、俺が納得するとでも思ってんのかよ。

美咲に対する苛々する気持ちが次第に大きくなっていく。


好きと言う気持ちよりも、今は美咲に対しての複雑な苛立ちだった。