Existence *

「誰からか分かる?本当は貴重品は預かっちゃダメなんだけど、その女の人どうしても渡してほしいみたいで必死だったって言ってたよ?」

「そう…」

「もしかして、それってさ…」

「あぁ、美咲だろうな。俺に金を返す奴なんて美咲しか居ない」


他の誰でもない美咲。

もうこの時点で分かってしまった。

美咲が俺に対しての気持ちが。


もうすべてを返していくに違いない。

俺とは何もなかったかのように、全てを俺に返却して来ようとしている。

それが俺に取ったら腹立たしかった。


「貸してたお金?」

「うーん…俺は1円たりとも貸した記憶もねぇけど」

「って言うかさ翔くん、今日の女の人は誰?最近よく来てるけど」

「誰って言われても…」

「あの人が居たから美咲ちゃん帰ったんじゃないの?」

「……」

「ねぇ、翔くん?」

「つか、なんなの、お前は。なんでそんな俺とアイツの話に首突っ込んでくんだよ」

「翔くんだって、それは同じじゃん!私とユウトが別れた時だって、めんどくさいほど私に関わって来てたじゃん!」

「悪かったな、めんどくさく関わってよ、」

「なのに何で私が聞いただけでそんな風に言われないといけないの?」

「そう言う意味で言ったんじゃねぇから」

「じゃあ、どういう意味よっ、」

「俺と美咲の事でお前に迷惑かけたくねぇって思ってんの。心配されるほどの事じゃない。むしろもう終わってるから関わんなって事」

「……」


納得いかないかのように実香子は顔を顰め、俺をジッと見つめる。


「実香子も、美咲も何も悪くねぇの。俺自身が未熟だったから。全て俺自身が撒いた種であって、誰も悪くない」

「……」

「ほら、もう帰れよ。とっくに19時過ぎてる。…な、実香子?」


スマホに視線を落とし時間を確認する。

19時18分。


「また、明日も来るから」

「はい、お願いします」


フッと笑った俺に対して、実香子は顔を顰めたまま病室を出て行った。