Existence *

「お前が俺に会いに来る意図はなに?」


もう14年くらいは経つ。

今頃俺と会って、何がある?


「えー…なにそれ。そんなの会いたかったからに決まってるでしょ?」

「会いたかった?」

「そう。翔に会いたいってずっと思ってた。だって私達が別れたのも自然消滅的な感じだったし、あの頃はお互いそこに執着してなかったでしょ?」

「……」

「別に嫌いで別れたとかでもないし…」

「……」

「周りでさ、翔の話をちらほら聞くようになってから、ずっと会いたいって思ってたの」

「……」

「翔に彼女が居ないのだったら別に会いに来てもいいと思うんだけど。…違う?」


まっすぐ視線を前に向けて煙を吐き出す俺の視界に茜の顔が移り込む。

その視線に合わせることなく、俺は指に挟んでいたタバコを一吸いした後、灰皿にタバコを押し潰した。


「ま、会いに来るのは自由だけど…」

「じゃ、会いに来る」

「ここに来ても何も楽しい事ねぇだろうが」

「あるよ。翔に会えるもん」

「会ったところで何もねぇわ。してあげられることが何もない」


そっと呟き、俺は重い腰を上げる。

足を進めていくと、後ろから茜の足音が近づいて来る。


「別にいいよ。何もしてもらわなくても。ただ、私を見てほしい」

「……」


その言葉に一瞬立ち止まって、俺は振り返る。

その先に見えた茜は俺をジッと見つめて同じ様に立ち止まった。

…はい?

いま、なんつった?


だけど俺は何も言わずにその視線を外し、再び足を進めて病室へと向かう。

その向かっていく途中、すれ違う実香子は俺を見た後、後ろの茜に視線を送っていた。


ここに居ると何もかも実香子に監視されてるようで、ある意味しんどい。

さっきの視線も、また女?って言う冷たい目。


いや、むしろ俺が連れて来たんじゃないから。

病室に入り、ベッドに腰を下ろす。

角度を変えていたそのベッドに俺は背を付けて、テーブルに置いてある水を口に含んだ。