Existence *

あれ以来、香恋は本当に来なかった。

そして諒也も来なく、美咲との関係に対して何も聞いてはこなかった。


誰がどこまで話して、誰がどこまで知ってるのか分からないけど、周りが最近では全く美咲の事について触れてはこなかった。

それが俺にとったら物凄く楽だった。

楽と言うより今の俺にはそうしてほしいと思う事。


「…よぉ、」


スマホを片手に視線を落としている時、不意に聞こえた声に俺は視線を上げる。

俺と目が合った瞬間、蒼真さんがフッと頬を緩めてパイプ椅子に腰を下ろした。


「お前、入院すんの好きやなぁ」

「別に好きじゃねぇっすよ」

「調子は?」

「いいっすよ」

「ほんま、何してんだよって話だけどな。まぁ、でも?お前の気持ちも分らんでもないけど」

「はい?つか蒼真さんがそんな事分かる訳ないっしょ?」

「ごめん。それが分かるわ。多分、お前の気持ちは他の誰でもない俺にしか分らんと思うわ」


そう言って蒼真さんはクスリと笑った。


「あー…はいはい、桃華さんね」

「おい、適当に流すなや。まぁお前みたいに入院にまでなってねぇけど、酒に溺れたんは事実や。ルキアさんにお前と一緒やんけ、とか言われたし」

「そうなんすね…」


そう小さく呟いて、苦笑いを漏らした。


「で?ちょっとは落ち着いたんか?」

「落ち着いたっつーか、何も考えないようにしてるだけっすね」

「流星とは会ったん?聞く話によるとすげぇ怒ってたみたいやけど」

「会ってねぇっす。会った所で話す事なんかなんもねぇし」

「でもアイツはお前の体調心配してるらしいけど?」

「そんな訳ねぇっしょ。俺が死んでも構わんって言ってたしな」

「んなもん言葉のアヤやろ」

「でもまぁ思うんすよ。昔から生きてる意味とか分かんなくて、ただホストの世界にのめり込んだだけで、生きる執着もないと思ってた」

「……」

「考えないようにしてても生きてたら考えるし、ここに居ると尚更。蒼真さんには分かんねぇっすよ」


その言葉に蒼真さんはフッと笑って頬を緩めた。