Existence *

「そーなると思ったわ。おい香恋、顔見たらすぐに帰ろうなって言っただろ?ここに長い事いちゃダメだから」

「……」

「おい香恋、聞いてんの?――…あ、ごめん。仕事の電話」


スマホを取り出した諒也が俺に向けて顔を顰める。

そのまま諒也が部屋を出ていくと、まだ俯いている香恋の顔を覗き込んだ。


「香恋、俺が元気になったらまた遊ぼうな。最近、遊んでねぇもんな」

「翔くん、元気じゃないの?」

「え、あー…元気だけど…」


何て言ったらいいのか分からず思わず苦笑いになり、言葉を失う。


「香恋も、ちんどいの。おねちゅある」

「まじで?大丈夫かぁー、香恋」


首を振る香恋に苦笑いが止まる訳でもなく、俺は少し隣に移動してスペースを開けた。


「ほら香恋、おいで。もぉ、お前だけ特別だぞ」


シーツを捲って、香恋を招き入れる。

ニコッと笑った香恋がちょこんと俺の隣で寝転んだ。


「パパ来るまでだぞ、香恋」

「うーん…」

「翔くん、おうちに帰らないの?」

「うん。まだかな」

「香恋もここに居る」

「香恋は帰らねぇとママが心配するよ?」

「しないもん」


ギュッと小さな手で抱きついて来る香恋を抱きかかえ頭を撫ぜてると――…


「――…うわっ、ビックリした!香恋ちゃんか、」


突然入って来た実香子の声で俺は顔を上げ、視線を向けた。


「ほんとにびっくりした。翔くん、今度は病室で女と寝てんのかと思ったよ」

「その言い方やめろって」

「翔くん、何しでかすか分かんないから」

「その言い方も辞めろ」

「だって…。あれ?香恋ちゃんどうしたの?」


ベッドの上でシーツを被り寝転んでいる香恋を覗き込むように実香子が見る。