Existence *

「ごめん。何も知らなかったから」

「だって誰にも何も言ってなかったし、さっき蓮斗に初めて言っただけ」

「そっか。理由は聞かない。でも、私は女だから美咲ちゃんの気持ちわかる気がする」

「なにそれ」

「翔くん、昔っからモテるから。一緒に居るとしんどそう」

「しんどそうとか言うなや」

「あ、ごめん。また余計な事言っちゃったかも」


苦笑いする実香子に俺はため息を吐き出した。


「ま、でもそう言われても仕方ねぇんだけどな。最近自分でもわかる」

「…あのさ、」


実香子がそこまで言いかけて言いにくいように言葉を止める。

視線を向けると実香子は俺を見た後、気まずそうに視線を逸らした。


「なに?」

「ごめん。…翔くん」

「どした?」

「翔くんと美咲ちゃんが別れたのって、もしかしたら私の所為かも知れない…」

「はい?どういう事?お前はなんも関係ねぇじゃん」

「うん…」

「…実香子?」


俯く実香子の名前を呼ぶと、実香子は表情を崩したまま視線を上げた。


「あの女の人、今回は来ないね」

「あの女の人って誰?」

「ほら、前に翔くんが入院してた時にずっと来てたじゃん。…何て言うの?ほら高嶺の花って言うかオーラが物凄い人だよ」

「あー…リアの事?」


実香子のその言葉だけで誰なのかはすぐに分かった。

別に来なくていい。

むしろ今、一番見たくないのは美咲じゃなくて、リアかも知れない。


「あの人さ、ここに来たんだよね」

「は?何しに?」


実香子の言葉にビックリした。

驚く俺とは対照的に実香子は悲しそうに顔を顰めた。


「何しにって言うか、私に会いに?」

「え、実香子に?…なんでお前に?いつ?」

「去年の…12月の初め頃だったと思う。…確か、」


12月初め?

なんで?

何の用で?