Existence *

暫くして入って来た実香子に閉じていた目を開ける。

顔を顰めた実香子は台車を押して、ベッドの横に付けた。


「翔くん、ちゃんと答えて」

「なに?」

「お酒、飲んだよね?」

「飲んだ」

「何杯?」

「そんなこと分かんねぇわ」

「分からないくらい飲んだの?」

「あぁ」

「何飲んだの?度数は?」


実香子が俺を見てキっと睨んだ後、顔を顰めた。


「ウイスキー飲んだだけ」

「飲まないって約束したでしょ?今、入院中だよ?」

「ごめん…」

「ごめんじゃ済まないよ!翔くんの身体だよ?誰も代わる事出来ないんだよ?大事にしてよ!」

「……」

「今から血液検査と、点滴するから腕出して」

「ん、」


反対側の腕で視界を遮って目を瞑る。


「…実香子、今日19時までだったんだろ?」

「うん」

「まじで、ごめん」

「もう、いいよ謝らなくて。…私も悪かったから」

「え、なにが?」

「ほら、美咲ちゃん来てたでしょ?その後、泣いてたって翔くんに言っちゃったからかなって、思った」

「……」

「女がらみで泣かせるの辞めなよって言った所為かなって。それで何か嫌な事思い出させちゃっのかな?って」


実香子は手を止めて寂しそうな言葉を吐き出す。

その実香子の言葉で俺はフッと笑った。


「違うから。実香子のせいじゃない」

「なら、いいけど…」

「でも、実香子の言った事は正しい。だからと言って、それをどうしたらいいのかもわかんねぇの」

「美咲ちゃんと…」

「アイツとは終わってる」

「え、なんで?」

「なんでって言われてもアイツから別れたいって言ってきたから」

「それを受け入れたの?」

「そうするしかなかった。って、より戻したお前に言う事じゃねぇよな。蓮斗から聞いた」

「あ、うん」


小さく呟く実香子の声で視界を閉ざしていた腕を振りほどく。


「って、んな顔しねぇでくれる?」


そう言って俺の腕に点滴の針を刺した実香子が俺を寂しそうに見た。