Existence *

「もうめんどくせぇわ」


小さく吐き出した言葉とため息。

寝転んでいた身体を起して、台の上に置いていた水を口に含んだ。


「お前、それで酒に頼ってんのかよ」

「違う」

「違うってなに?じゃあ何でお前、そんな入院するほど飲んでんだよ」

「…他の奴に言わなくていいから。諒也には黙っといて」

「んなもん、すぐにバレるわ」

「……」

「別に俺はお前が入院しようがどうでもいいけどよ、美咲ちゃんに心配かけんなよ」


流星と電話を切って、再び身体を横にする。

美咲に心配かけんなって?

つかまじでアイツの名前出すなよ。

その美咲を忘れるために飲んでた酒。

もうあいつは関係ない。


次の朝、気だるいまま一番にスマホを握りしめた。

別にこいつに言わなくったってもって思ったけど――…


「…はい」


まだ頭が冴えてない意識の中、蓮斗の声が通り抜ける。


「あのさ、俺、明日から入院すんだわ」

「あぁ、だろうな」

「だろうなってか、」


当たり前だろって感じの素っ気ない返事に思わず鼻でフッと笑ってしまう。


「あんな尋常じゃねぇ咳ばっかして頭痛いとか言って、もう前の症状とほぼ同じじゃねぇかよ」

「まぁ…」

「どんだけお前飲んでんだよ」

「暫く休むっつっても、もうこのタイミングで辞めようと思ってる。どっちにしろ3月で辞めるし」

「つか3月まで入院してんだろうが。どーせ入院だろうなと思って社長にはそう言ったけどよ、後でお前からも電話しとけよ」

「あぁ」


蓮斗と電話を切った後、社長にもその事を伝える。

俺もそうだろうなって思ってたと言われ、このタイミングで辞める事については何も言われず、むしろ少し休めって言われた。

またご飯でも行こうやって。

16歳のなにもしらない俺を拾ってくれた時から俺はこの人をずっと慕って父親のように思ってきてた。


きっとこの人とはこの先も縁は切れないだろうって。

ワガママだった俺に怒る所は叱って、ある意味更生させてくれた。


あの頃の生意気だった俺に親身に話をしてくれたのは、他の誰でもなく、この社長だけだった事。

だからこの人との縁など切れる事はない。

むしろ俺が切れないんだと、そう思った。