Existence *

「え、ちょっと何言ってんの?」


実香子が戸惑った様に声を出し、俺を不安そうに見る。


「そんな心配すんなよ」

「するよ!みんなも心配するから」

「しねぇよ。だからお前は誰にも言わなくていい」

「でも蓮くんには言わないと」

「あー、仕事一緒だからって事?」

「うん。他のみんなにも…」

「はいはい、分かったから」


俺の事を思っての心配なんだろうけど、それが少し面倒くさかった。

他の奴に言ったって、なんもねぇだろ。

言ってどうにかなる訳でもない。

自分が撒いたタネなんだし…


「明後日まで何もしないで大人しくしてよね。肺炎、悪化しちゃうよ?」

「ん、」

「お酒は絶対ダメだよ!咳出てるからタバコも暫くやめてね」

「お前ほんと母親かよ」

「そんな言う事聞かない息子の母親なんて嫌だよ!私はずっとみんなの看護師だよ」

「はーい、そおっすね。…もぉ帰るわ」


実香子に背を向けてヒラヒラ手を振る。

もぉ!と、背後からため息交じりの声が吐かれ、病院を後にした。


別に報告するつもりでここに来た訳でもない。

多分暫く、もう来れないから――…


持っていたペットボトルの水を目の前の墓石にかける。

ポタポタと落ちていく水滴を目にしながら軽く息を吐き出した。


乾いた空気に込み上げてきた咳を吐き出し、ライターで線香に火を点ける。

火を点けた瞬間にその臭いでまた咳がむせ返る。


出れば出るほどにむせ返る咳に、持っていたペットボトルの水を喉に流し込む。


思う様に呼吸が上手く出来ない所為で少し苛立ち、軽く舌打ちを吐き捨てた。

正直自分を甘く見ていた。

大量摂取しても、大丈夫だろうと。


だけど5年前にした時よりかは何故か落ち着いていた。

入院宣言されてんのに、そこまで嫌ではなかった。


ほんと、どうでもいいように…