Existence *

「お前さ、もしかして美咲に会った?」

「だれよ、それ」

「俺の女…」


では、もうないけど。

多分、お前の所為でな。


「は?楓の口からそう言うの聞きたくないんだけど。俺の女ってなに?あの女に何かされたって訳でもないのに彼氏気分ですか?」

「お前、何が言いたい?」

「私の気持ちは無視なの?私はあの女にないものをいっぱい持ってる。病院にも来なかったじゃない」

「……」

「私は楓が好きだった。ずっとずっとその気持ちは伝えてるはずよ?あの女よりも先に楓を好きになったのは私の方」


リアとの会話が拗れていく。

ドロドロとした空気と会話がやけに重い。


「悪いけど、アイツの事、悪く言うの辞めてくんねぇか?確かにお前はアイツよりも無い物をいっぱい持ってる。でも、アイツもお前よりも無い物いっぱいもってる」

「……」

「お前、会うなっつったよな?なんでまた会ってんだよ、」


さっきまでの大量の酒を飲んだからだろうか。

何故か苛々する。

酒が、今頃になって効き始める。


「会ってないわよ。え、なに?なんかあった訳?珍しいわね、そんなに突っかかってくんの」


クスリと笑ったリアが口角を上げる。

本当に何もなったかのように演じているつもりだろうか。


「アイツにも会うなっつったし、業界にも戻んねぇっつっただろ。リアには感謝してる。でもお前の気持ちに答える事は出来ない」


言うだけ言い放って、その場から離れる。

このまま居たら、酒の所為でリアに余計に突っかかってしまうだろう。


そんな事になると余計にめんどくさくなる。

足を進めていく先に捉えた彩斗の姿。

道路と歩道との間にある柵に座って、スマホに視線を落としている彩斗の姿。


「…翔さん、」


俺に気付いた彩斗が顔を上げてスマホを仕舞う。


「悪い。今日はもう一人にさせて」

「ちゃんと帰って下さいね」

「あぁ」


彩斗が拾ってくれたタクシーに乗り込んで、俺は帰宅する。

苛立った所為か酒が今になって効き始め、何故か気分が悪くなる。

そのままソファーにうな垂れたまま俺は意識を飛ばしていた。