Existence *

「じゃあ、な」


手をヒラヒラさせ彩斗に背を向ける。


「いや、俺も翔さんちまで着いて行くんで」

「はい?」

「流星さんに連れて帰れって言われたし」

「ガキじゃねぇんだし一人で帰るわ」

「そう言う意味で言ってるんと違うんすよ、また違う店に行かれちゃ困るんですって」

「あのさ。お前さ、何をそんなに気にしてんだよ」


彩斗から身体を逸らしていた身体を再び戻し、彩斗を身構えた。


「翔さんも分かってるっしょ?また入院送りになりますって」

「なったとしてもお前には迷惑かけねぇ――…、ちょ、お前やっぱ先帰れっ、」


言いかけた話しの途中で、俺の視線が大通りを超えて反対側の通路に向かった。

その瞬間、目で捕えてしまった人物。

彩人に慌ててそう伝え、俺は無意識にそっちの方向に足を走らせていた。


反対側につき、今まさにタクシーに乗り込もうとする腕を咄嗟に掴む。


「…――おい、リア」


突然の事だからだろうか。

一瞬リアの目が見開き、そしてフッと小さく笑みを浮かべた。


タクシーの運転手に断りを入れたリアが「なに?」そう小さく呟き、俺はリアから腕を離す。


「お前に話がある」

「また何?まぁ、私も?あるけど」

「お前の話はいい」

「なによ、それ。ホント勝手よね」

「勝手なのはお前じゃねぇの?俺がこうやって、お前に話があるって何のことか分かんねぇの?」

「分かんないわよ。楓の話はハイハイ聞いて、私の話は無視って?都合よすぎじゃない?」

「…お前、何が言いたいの?」

「業界から出てる話と全く違うんだけど」

「は?何のこと?」

「楓が戻るって話よ」

「俺は一言もそんな話してねぇけど」

「だから話が違うって言ってんの、それに楓が戻んないのってあの女の所為じゃん」


そこでやっとあやふやになっていた糸が繋がってしまった。

やっぱ、この女は美咲にまた会ってる。