Existence *

「あー…それか。関係ねぇよ」

「じゃあ!どうして結果を出さないの?私が居るから?」

「違ぇよ」

「じゃ、なんでっ?」


声を上げた美咲の唇が密かに震える。

掴んでいた美咲の顎から手を離し、俺は覆いかぶさるように美咲の肩に顔を沈めた。


もう、何がなんだか分からなかった。

俺の知らない所で何が起こっているかなんて分かんなかった。


「もう断ってる。ただ、しつこいだけ。辞めた人間がまた戻る必要ねぇよ」

「……」


お前は俺の事が信じられねぇの?


「なのに美咲は俺から離れんのか?」

「……」


お願い。

信じろよ、俺の事。


「幸せにするって言っただろ?」


幸せが何なのか分からなかったけど、美咲の傍に居るって事だけは出来る。

沈めていた顔を上げると、美咲の瞳とカチ合う。


綺麗な美咲の瞳が俺をジッと見つめて、そして閉じていた美咲の唇がゆっくりと動いた。


「…ごめん、翔」


何を言っても俺の言葉が通じないどころか、ごめんで解決させようとしている美咲に納得すらいかなかった。


「だったら最後に抱かせろよ」

「…っ、」


揺れた美咲の瞳など無視をし、俺は美咲の唇に自分の唇を重ね合す。

今のよくわからないこの感情にさえ苛々し、重ね合した唇が優しいと言えるほどのもではなかった。


強引で激しい事を知らず、ただ美咲と唇を交わし、唇を割って舌を入れる。

絡み合う舌。

このまま手放したくないと思っていた。

ここで手放すと、本当にもう美咲は戻ってこないだろうと思った。


キスを交わし、服の下から手を滑り込ませる。

肌に触れ、キスを交わす俺の頬に冷たい何かが伝わる。


その所為で、動かしていた唇が必然的に止まり、そして離れた。

目を瞑っている美咲の目じりから新たに滑り落ちた涙。