Existence *

「…別れたい」


数分おいて小さく呟かれた声。

いま、なんつった?


思わず深いため息が漏れてしまった。


「お前さ、誰かに言われた?」


こんな事考えたくはなかったけど、誰かが絡んでいるしか思えなかった。

また、リアか?

いや、違うか。

もう誰が美咲と関わってんのかも分かんなかった。


「言われてないよ。私がそう決めたの」


そう決めたって、勝手に決めんなよ。

勝手に決めて、勝手に一人で解決してんじゃねぇよ。


「勝手に決めんなよ。俺の気持ちは変わってねぇって言ったよな?」

「うん…」

「だったら美咲が俺に対する気持ちはそんなんだったわけ?」

「……」

「この5年すげぇ待ってた。なのにそんな簡単に終わりにすんのかよ、…なぁ美咲!」


逸らされる視線を俺に向けようと美咲の顎を無意識に掴んでしまった。

その所為で、美咲の視線が俺に向き、重なる。


潤んだ美咲の瞳が揺れ動き、その美咲の視線と向き合えた事に嬉しいはずなのにその視線を避けたのは俺の方だった。


ずっとこの5年待ってた。

ずっと、ずっと美咲の事だけを考えてきた5年が今、崩れようとしている。


ほんと、意味わかんねぇな。


「だったら翔は私に言うことないの?」

「は?」


その言葉で再び視線が美咲に向く。

その美咲の表情が悔しそうに俺を見つめていた。


「知ってるよ、ホスト業界に誘われてるんだってね」


やっぱり美咲は知っていた。

どこで誰に聞いたのかは分からないが、美咲の耳にも入っていた。