Existence *

「必要だったよ。だからこそ言えなかった」

「どうして?」

「あのままこっちに引き戻してたら後悔するから」

「私はしなかったよ」

「違う。俺が後悔する。俺の所為で途中で辞めたんだって、ずっと後悔すっから。だから自分の中でずっと抑えてた」


お前には分かんねぇと思うけど。

どれほどの5年だったかなんて。

俺がずっとこの5年間、待ってた気持ちなんて分かんねぇだろうけど。


だから、美咲引き戻す事なんか出来なかった。

楽しそうに行ってるお前を引き戻す事なんて出来るわけねぇだろ。

頬杖をついて俯きタバコを咥える。


ほんとは帰って来てほしい気持ちはあった。

俺の傍に居てほしかった。


でも、一番は美咲の幸せをただ叶えてやりたかった。


「ホストを辞めた理由ってなに?」


つか、今度は何の質問だよ。

今更、なに?


「言っただろ。辞める決心がついたからって」

「じゃあ、その中に私は入ってた?」

「え?」

「辞めた理由の中に私は入ってたかって!」

「お前の所為で辞めたとか言ってねぇだろ。年齢も年齢だしって、言わなかったか?」


やけに食い掛って来る美咲に視線を向けると、美咲の頬に涙が伝う瞬間だった。

潤んでる瞳がさっきよりも赤みを帯び、そこに溜まった滴。

その滴が再び頬に伝うと、美咲はそれを手で拭い取った。


美咲の呼吸が乱れ、涙を拭いながら深く深呼吸をする。

そして一瞬にして美咲の表情が崩れ落ちた。