Existence *

あの後を追いかける事すら出来なかった。

きっと若かった頃の俺だったらすぐに追っかけていただろう。


でも、そうすることが出来なかったのは歳をとった自分自身でもない。

こうなってしまったきっかけを作った自分自身にムカついてしまったから。


冴えないまま帰宅し、そのままソファーに倒れ込む。

あの男は誰だろうかとか、

今頃何してんだろうとか、

考えなくていい事ばかり頭のを過っていく。


むしろ、俺が入院していた事を隠していただけで、帰って来ないのがおかしいと思った。

それだけで帰って来ないんだろうか。


いや、それだけのことが美咲にとっては重要な事だったのだろう。

お母さんの事も隠してたし。


その日は結局、余計な事ばかりを考えたせいで一睡も出来なかった。

頭がやけに重い。


朝、6時。

仕事に行く前に美咲にLINEを送る。


“とりあえず今日は帰って来い“


あの男とどうなったのかなんて考えたくもない。

むしろ、ここに帰って来るんじゃないかって、少しは思ってた。

でも結局は美咲は姿を現すことなどなかった。


そして美咲からの返信が来たのは24時を回った頃。

“そのうち帰るから″


「そのうちって、いつだよ」


今日も帰る気がないと思わせる言葉に、思わず舌打ちが出る。

そのまま美咲に電話をし、コールするも美咲は出る事もなかった。


「まじで、」


ふざけんなよ。

自分自身の苛立ちが少しずつ美咲に向けられる。

ちゃんと、なんで俺が入院をしていた事を美咲にすべてを話そうと思ってるのに、なんで美咲は帰って来ないんだと。



確かに隠してたのは俺が悪い。

帰って来てからも言わなかったのも悪い。

だから、それをちゃんと美咲に言おうと思ってんのに…