Existence *

「何で?」

「美咲がここでボーっとする時って、大概何かあるよな」

「そう…かな」

「ましてや寒くなってんのに出ねぇだろ」

「あー…そっか」


苦笑いで呟く美咲にフッと小さく笑みを返す。


「そっか…って。って言うか、あの子、大丈夫?」

「あー…天野さん?」

「うん」

「今日は帰るって言ってたよ。天野さんさ、すっごい頑張り屋なの。朝いちからバイト行ってさ、それでギリギリまでバイトして学校に来るの。凄いよねぇ…」

「やっぱ美咲と似てんな」


思い出すかのようにフッと笑い、飲み切ったビールの缶にタバコの灰を落とす。

ほんと、どことなく似てる。

頑張るところが。


「…似てるって?」

「あの頃のお前はそうだった。無我夢中ってやつ。ずっと働いて、俺が行くなって言っても行ってたからな」

「そうだっけ?」

「そうそう」

「多分、あの頃は周りなんて見えてなかった。けど、あの頃と比べて何が変わった?って言っても同じなの。なのに、あの頃より頑張ろうって思えないのはなんでだろう…」


淡々と口を開いていった美咲は寂しそうに笑みを漏らし、空を見上げて浅く深呼吸をした。


「それは大人になったって事」

「…大人?」


その言葉に不思議そうに美咲は俺に視線を向け、首を傾げる。


「ガキん時ってさ、何かを目標に一直線になんのが当たり前。まぁ、大人もそうなんだけど、それを強く思うのが学生の時」

「……」

「親に心配かけないようにと一生懸命頑張ったりさ、親に認めてもらおうとして頑張るとかさ。でも、その逆で親に対抗心もって悪い事する時もさ、なんでもあの頃は自分中心」

「……」

「自分がしてる事が正しいって次第に思うもん。いい事も悪い事も自分が正しいって思えてくんの」

「……」

「不思議だよな」


記憶を辿って懐かしさに情けない笑みを漏らす。

反発ばっかしてた俺が言う事でも何でもないけど、全てが自分中心だった。

周りの事なんてどうでもよくって、ただ自分が良ければそれでいいって思ってた頃。


だからその領域に入られるのが、物凄く嫌だった。