Existence *

いつから寝てしまったのだろうか。

沙世さんと話してて、何か沙世さんが1人で会話してたのだけは覚えてる。

でも、あの後、何を語られたのかは全く覚えていない。

気怠い身体を立たせ、俺はこの部屋を出る。


そしてポストに鍵を落として、帰宅をした。


寝てしまっていた所為か未だに気だるい感じが身体に残る。

23時を過ぎた頃、風呂に入ってリビングに向かうと、カーテンが密かに揺れているのに気付いた。


…美咲?

珍しい。そんな所で。

どした?


冷蔵庫から取り出したビールとタバコを手に持ち、ベランダの前に来る。

だけど一旦引き返して、椅子に掛けてあったパーカーをつかみ取りもう一度ベランダに向かった。


「…おかえり」

「あ、うん。ただいま」


俺の声に反応した美咲は振り返り、そう声を返す。


「寒くね?」

「うん。ちょっとね」

「はいよ」


手に持っていたパーカーを美咲の肩にかけ薄っすら微笑んだ後、ビールのプルタブを開け何口か喉に流し込んだ。


「ありがと」


微笑み返してくる美咲に頬を緩め、目の前の景色に視線を送る。


「もう冬だな」

「うん。…冬は嫌い」

「何で?」

「寒いから」

「そのまんまじゃん」


もっと違う返答が返って来ると思いきや、そのまますぎて笑ってしまう。

ビールを口に含んで、持ってきていたタバコを咥えて火を点ける。


「だって寒いの苦手。翔は?」

「まー…夏の方が好きだな」

「でしょ?一緒」

「つか、なんかあった?」


瞳を一瞬だけ美咲に送り、再び目の前の景色に向ける。

咥えていたタバコを離し、空を見上げて煙を吐いた。