Existence *

「珍しいっすねぇ。こんな所で寝るの」

「……」

「もしかして、また夜の仕事に戻ったんすか?」

「んなわけ、ねぇだろ」

「あー、そうなんすか?なんかそんな話が出てるってアキが言ってたから」

「は?アキが?」

「なんか最近はそんな話ばかり聞くっつってた」

「ほんと暇人ばかりだな」


呆れた様に呟き、寝転がる態勢を変え、また目を閉じる。


「イケメンが姿消したらそら寂しいっしょ?俺も翔さんがここ辞めたら寂しいっす」

「良く言うわ」

「10年近く一緒に居るんすよ?そりゃ寂しいっすよ。だから夜の方もそう思うっしょ」

「これ以上縛られたくねぇからな…」

「はい?」

「いや、なんでもねぇ」


あの世界が嫌いなわけじゃない。

ただ、あの世界にとどまると、この先の事が全く見えないままで終わってしまう。

流星みたいに後輩たちを指導する力とかもなく、夜の店を新たに作り上げようと言う能力もない。

ある意味あの世界は俺にとったら別格だった。


初めから30で辞めると誓っていたのは、あの世界で自分の能力を発揮できないと思っていたから。

凄いと言われ続けてきたけれど、自分では全く思ってなくて、むしろあの世界によくいたなって自分でも思った。


「翔さん、辞めても俺と縁切らないでくださいよ?」

「うーん…切りたくても切れそうにねぇしな」

「は?どう言う意味っすか?」

「うそうそ」


ハハッと笑いながら身体を起し、ペットボトルのお茶を口に含んだ。


「いつかは蓮斗さんも辞めそうじゃないっすかー…」

「そうかな?案外アイツはいるかもよ」

「ま。愛優の面倒見たら奢ってくれるしなー」

「俺より稼いでっから奢ってもらえよ」

「でも面倒見ないと奢ってくれないっす」

「いいじゃねぇかよ。人の役に立つって事はいい事だろ」

「は?これは違くねぇっすか?」

「そうか?」


クスクス笑う俺の視界に噂をしていた蓮斗の姿を目でとらえる。