Existence *

「つか、美咲は大丈夫?」

「え?」

「昨日、お父さんと会っての今日だから精神的に色々あるんじゃねぇの?あんま言わなかったけど、お前の事だから内に秘めてるんじゃねぇの?」


タバコを咥えて隣を見ると、美咲は何かを思い詰めるような表情で、目の前の夜の街に視線を送っていた。

今日はずっとそれが気になって仕方がなかった。


「大丈夫」


小さく呟かれた声。

そして薄ら微笑んだ美咲は俺を見た後、視線をすぐに外した。


ほんと、そう言うと思った。

美咲だから、そう言うと思った。


「無理すんなよ」

「うん」

「さて、明日早いし俺、寝るわ」

「ごめん…」

「あっちの部屋で寝っから」

「うん」

「学校までゆっくりしとけばいいから」

「あー…でも天野さんバイトだって」

「バイト?」

「うん、いつもバイトしてから学校来てるから」

「へぇー…やっぱ美咲と似てる」


思わず笑みを零し、煙を吐きながらタバコを灰皿に押しつぶす。


「おやすみ」

「うん、おやすみ」


そう言って美咲の頭をなぜ、俺はもう一つの部屋に足を運ばせた。

普段使ってない部屋。

殺風景で物などほぼ何もない。

ベッドがある訳でもなく、小さなソファーがあるのみ。


そこに座り寝転ぶも、結局寝れるわけでもなく全然寝ないまま朝を迎えてしまった。

時刻はもうすぐで5時半になろうとする。


とにかく眠い。

今までは寝ずに働いていても、それなりに必死だったせいか、眠いと言いながらも起きられていた。


美咲たちを起さないようにと物音を立てずに仕事に行く準備をし向かう。


「翔さん、どーしたんすかぁ?」

「うん?」


ベンチに寝転ぶ俺にタケルの声が耳に入り込む。

額に腕を置き、視界を遮ったまま返事をすると、タケルがベンチに座ったのが分かった。