Existence *

「…美咲」


傍まで来て美咲の肩に触れ、その手をゆっくりと擦るように動かす。


「ごめん…。何もかも、もう分かんない」


美咲の瞳から涙が溢れ落ち頬を伝う。

お母さんの葬儀以来に見せた涙が、何度も頬を伝った。


「美咲…」

「……」

「関係ねぇ俺が、もう会うなって言ったけど、美咲がこの先も会いたいなら会ってもいいから」

「どう言う意味?」


涙を拭う美咲は驚いた表情で俺を見つめる。


「美咲の父親には変わりねぇから」

「でもっ、私は嫌」

「分かってる。もし俺の立場だったら美咲と同じ気持ちだから。でも、あの人が居なかったら、美咲の存在すら何もねぇから」

「……」

「じゃなかったら、俺は今も一人だったかも知んねぇ…」

「……」

「勝手な事言ったけど、美咲が決めな。その事に俺は何も言わねぇから」


身構える俺に向けた瞳から涙が溢れる。

その頬に伝った涙を拭い、俺は美咲をキツく抱きしめた。

どれくらい時間が経ったのかも分からなかった。

次第に落ち着いてきた美咲の身体を離し、顔を覗き込む。


「ごめんね」


小さく呟いた美咲に頬を緩め、首を振る。


「ううん。大丈夫か?」

「うん。荷物纏めるね」

「美咲?」


立ち上がった美咲の腕を引くと、美咲は振り返る。


「うん?」

「今日はココにいる?お母さんと一緒に…」

「私は翔と居たい。…だめ?」

「ダメとかねぇから」


立ち上がった俺は美咲をもう一度抱きしめて頭を抱え込んだ。