Existence *

「俺が言うのもなんですが、もう美咲とは会わないで頂けますか?正直、俺も美咲の気持ち分かるんで…」

「……」

「家庭があるならそっちを大事にしたほうがいいんじゃないんすか?こうやって美咲に会うと言う事は、今の家庭にとってもあまり良くないんじゃないんすか?」

「……」

「まだ娘さんが小さいのなら尚更だと思うんですけど。だから、これで最後にして下さい」


俺の吐き出した言葉に男は何も言わず、俯いていた顔を上げる。

そしてお母さんの遺影の横に何かを置いたあと、男は立ち上がって俺達に頭を下げた。


この場から姿を消す男の後を着いていき、外に出た男を呼び止める様に俺は声を出した。


「あの、」


口を開き、玄関の扉を閉めると同時に男が振り返る。


「聞きたかったんすけど、今更になって来る意図は何なんすか?」

「…美咲は娘でもあるから」

「だからなに?今更になって来られてもこっちからすると迷惑すぎるって事、考えなかったんすか?」

「……」

「思い出したくもねぇ事、思い出して、アンタの都合で振り回されて、残された側の事なんかイチミリも考えずに出て行ったのそっちじゃねぇかよ。なのに今更家族ずらさらても困んだけど」

「別に困らせようとしてる訳でもないが」

「いや、普通に迷惑っす」


そう呟いた俺の言葉で男は何も言わずに背を向け、歩き出した。

俺は何が言いたかったのだろう。

ただ、美咲の父親を俺の父親と重ねてしまった事。


もし、俺の父親と会っていたら同じことを吐き出していたのに違いない。


思わず深いため息を吐き出してしまった。

家の中に入ると、美咲はしゃがみこんで目を擦っていた。