Existence *

「すみません。線香あげたら帰ってくれますか?」

「は?何言ってんの?」


案の条、美咲からの声は素っ気なく冷たい。

美咲に視線を向けると、美咲は俺を冷たく見つめた。


まぁ、そうなるのが普通か。

会いたくない気持ちも、今の領域に踏み込んでほしくない気持ちもわかる。

俺も、そうだから。


「…失礼だが君は…」

「アンタに関係ないで――…」

「今、美咲と一緒に住んでます。…とりあえず今日は線香あげたら帰って頂けますか?」

「ちょっと待ってよ、翔!」


困惑した美咲の声を聞きながら、俺は美咲の手にあった鍵を取り、玄関を開ける。


「すまない」


そう言った男の人を俺は案内した。

何も言葉を交わすことなく座り、手を合わせているこの人はいったいどこで美咲の母親が亡くなったことを知ったんだろうと思った。

そして今更何のためにここに来たのだろうか。


ほんと、今更かよ。


もう5年前になる。

沙世さんが言ってたっけ。

お墓で俺の父親と会ったって。

俺は元気にしてるのかって。


ほんと、くだらねぇよな。

と言うか、くだらねぇ事してんのは俺か。

美咲の意見も聞かずに勝手にこの人を家の中に入れて。


「あの、一つ聞いてもいいですか?」


暫くして、俺は小さく口を開く。


「どうぞ」

「どうして亡くなられた事を知ってるんですか?」


問いかける俺の言葉に視線を美咲へと向けると、美咲は顔を顰めたまま俯いていた。


「丁度4年前。美咲が二十歳になった時から美恵とは会っていた。と、言うのも美咲に会わせてくれと」

「……」


正直この人は何を言ってんだと思った。

ほんと今更すぎて馬鹿じゃねぇのって。